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<レスダニアインタビュー>第1回 山田 毅さん(日本旅館鳳明館森川別館)

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人生の転機をしなやかに乗り越え、新しいキャリアで生き生きと活躍している大人の社会人のみなさんをご紹介するレスダニアインタビュー。第1回目は、東京・本郷にある日本旅館鳳明館森川別館の山田毅さんです。

「当たってくだけろ」の信条で自衛官から旅館スタッフへ転身

2018年4月から鳳明館で仕事をしています。ルーム係や施設の修繕などが主な仕事です。
元々自衛官をやっていましたが、54歳で定年退職しました。
その後運送会社でトラックの運転手を4年間やりましたが、トラック運転はいずれ自動運転などに代わっていく仕事です。それに、人手不足で休みがとれないこともありました。上司には休んで良いと言われましたが、自分が休むと誰かが穴埋めしなければいけない。それはできないので結局休めない。60代半ばまでこの仕事を続けるのは難しいと感じました。

旅館で仕事をしたいと思ったのは、語学力が活かせると思ったからです。これからは外国人旅行者が増えますから。

鳳明館の仕事は、建物が古いこともあり、修繕が多い。これは自分の得意な仕事です。先日も、女将から隣の家の木が倒れかかっているので切ってほしいと頼まれたので、自宅からチェーンソーを持ってきて、命綱をつけて屋根に上がりました。自衛隊時代は料理、修繕も含め、身の回りのことは全部自分でやりましたから、ここの仕事は自分に向いていると思っています。

歳をとってもまた新人としてできる

旅館業の世界に飛び込むことには、もちろん不安もありました。でも、それ以上に新しいことにチャレンジしたいと思いました。まったく違う分野の仕事をしてみたかった。自衛隊出身者でも、上位クラスになるとプライドがあって、旅館のようなところでの仕事はできないかも知れませんが、自分は歳をとってもまた新人として初めからできると思いました。

出身は新潟県長岡です。

もともと調理師になりたいと思い、免許を取りました。でも嗅覚があまり良くないので、プロの料理人としては難しいと考えていた時に、自衛隊の募集があるのを知って入隊しました。

若いころは習志野駐屯地で空挺隊に勤務しました。その後、アメリカ陸軍の学校に1年間留学しました。イラクにも派遣されましたが、昼間の最高気温は60度近くまで上がります。こうしてエアコンの効いている所で仕事ができるだけでも恵まれていると思います。

最後の赴任地のハイチは、治安が最悪でモラルも低い。毎日当たり前のように殺人事件が起こっているようなところでした。日本のように治安が良くて、どこに行っても近くにコンビニがあるようなところは、世界では珍しいですよ。

自分は、常に好奇心を持ち、“当たってくだけろ”を信条にしています。

家族は、妻と娘2人です。妻も先日定年を迎えました。元自衛官です。短大時代に取った保育士の資格を活かした仕事につきたいと言っています(笑)。

9月から、熊本に転勤した知人の息子を預かっています。高校生です。女将からは、外国人留学生のホストファミリーはどうかと勧められています。彼が高校を卒業したら考えたいと思っています。

 

<自衛隊の経験と誠実な人柄で仕事の幅を広げる 鳳明館森川別館女将 大曽根美代子氏のコメント

山田毅さんは、自衛隊から旅館業という全く異なる職種へ飛び込まれたわけですが、試用期間しか続かないかも?という私の予想を見事に覆し、頼りがいあるスタッフとして大活躍中です。

山田さんの仕事ぶりをみていると、自衛隊の経験が旅館の仕事に生かされていると実感することが度々あります。礼儀正しさ、お膳運びや布団を敷くのに必要な筋力、体力といった具体的な強みに加えて、集団行動のなかで培われた別格の責任感・チームワーク力は期待を遥かに上回り、山田さんを採用できたことは本当にラッキーだったと実感しています。旅館は同じ係同士、違う係とのスムーズな連携が不可欠ですが、自分の分担ではない仕事でも状況により率先して手伝う、他人の不手際で自分に負担がかかった場合でも、不満な感情を全く見せず速に対応することは、決して簡単ではありません。しかし山田さんにとってはごく当たり前のようです。更に、予期せぬトラブルでも慌てない冷静沈着さは自衛隊で培われたであろう精神力の強さだと感心するばかりです。

自衛隊というバックグラウンドとは別に、山田さん自身の誠実さはホスピタリティに従事するものにとって大切な資質であり、持前の ‟当たってくだけろ”精神により、仕事の幅をどんどん広げています。未経験の修繕(タイル貼り)でもネットで学習して見事に仕上げてくれました。屋根の上の木の剪定もチェンソーやハーネスを持参して難なくこなし、クリーニング店から布団のピックアップの際には、時短・ガソリン代節約の為に布団を背中に担いで自転車で運んでくるなど、嬉しい驚きの連続です。私自身、新しい旅館サービスの提供を試行錯誤しながら種まきをしている最中であり、山田さんの“当たってくだけろ”マインドとそれを実行する行動力は 素晴らしいお手本であり、くじけそうになった時のカンフル剤となっています。

山田さんの語学力にも助けられています。山田さんはルーム係ですから、お客様が外国人の場合日常会話が必要ですが、全く問題がありません。本館・台町に間違えて到着した外国のお客様のお迎えに行って頂いた際には、道すがら お客様が山田さんと楽しそうに会話をされており、フレンドリーなお出迎えのおかげで好印象を持っていただけたと思います。また、エアコンでリモコン操作に関して英語版のマニュアルも作成して頂きました。

山田さんという貴重な人材を得たからには、山田さんの経験を活かし、信条を尊重して、山田さんが新しい職場である旅館の仕事にやりがいを感じて頂けるように、微力ながらサポートしていきたと思っております。

 

★ReSDA’s Eye★

鳳明館森川別館は本郷の住宅街に佇む日本旅館です。小さな庭を抜け、玄関の敷居を跨ぐと、女将と番頭さんが笑顔で迎えてくれました。磨き上げられた板張りの廊下、タイルの目地まで清々しい洗面所など、どこも掃除が行き届いていて、おもてなしの心とレトロな建築の良さを改めて感じました。

森川別館は、特に地域とのつながりを大切にしています。地域の若いお母さんたちの集まりやイベントのためのスペースを提供する、観光を学ぶ近隣の専門学校のインターン学生の受け入れを行う等、地域と連携した新しい旅館のスタイルへのチャレンジは、大変面白い取り組みだと思いました。

森川別館では、現在9名のシニアスタッフが活躍しています。旅館の仕事は、繁忙期が季節によって偏っていて、固定された勤務形態ではないので、時間が比較的自由になるシニアに適していると言えます。実は、学生インターンの指導もシニアスタッフが担当しているのですが、これはマニュアルで決められた対応ではない、シニアならではの気働きと丁寧な仕事ぶりを見せることで、生きたホスピタリティを学ぶことができるというメリットにつながっています。

一方、シニアスタッフに活躍してもらうためには、様々な工夫も必要です。新しい仕事を覚えやすいようにメモを用意する、以前の職場経験を活かせるような配慮をする、スタッフの特性に合わせた仕事の配分を考える、採用のインタビューの際には、旅館ならではの仕事の魅力や楽しさをしっかり伝え、スタッフのモチベーションを高めるといったことを行っているそうです。

女将の大曽根さんが最もご苦労されているのは、新しく入ったシニアスタッフと指導スタッフ間の良好な人間関係を保つようにすること。シニアスタッフにとっては新しい仕事の習得やそれを保持していくことが簡単ではないため、指導側がフォローする等負荷がかかってしまうケースもあるそうです。そのため、大曽根さんが両者の言い分を丁寧に聞き、それぞれの良い点、評価している点を伝える。「こうしてはいけない」ではなく、「こうすると良くなる」とポジティブな表現で両者に伝えることを心がけているそうです。こうした中、山田さんはご自身の仕事をこなすだけでなく、当たり前のこととして他のスタッフを手伝い、どんな時でも冷静に対処する。誠実な人柄と自衛隊という特殊な環境で身につけられた仕事のスタイルが旅館のホスピタリティを陰で支えていると思います。

女将がスタッフに丁寧に寄り添い、しっかりとコミュニケーションをとることで、スタッフが仕事のやりがいを再認識し、森川別館のおもてなしの心やチャレンジするエネルギーを生み出していると感じました。

  • 鳳明館森川別館
    東京都文京区本郷6-23-5 03-3811-8171

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